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パンだな―パンダ主婦の本棚

よく眠りたまに色々考える主婦、twitterID:toppinpararinの本棚にある絵本をつらつら紹介していくブログです。

2016年に買ったすごい絵本② 勉強になってしまうのよ、ならなくても全くかまわないんだけど

昨年私が買ったすごい絵本たちを紹介する記事、第二弾でございます。

今回はなんとなく、いろんな意味で勉強になってしまう絵本。

いや、私は、絵本を読むことで勉強になんてならなくてまったく構わないと思っているので、

いわゆる知識絵本みたいなものは本棚にもあんまり無いんですけども。

「圧倒的な絵の力で、物語の世界はもちろん、描かれている機械の構造までわかってしまう」とか、

「理屈じゃねえんだよ!説得力とはこういうことだ!」とか。

「素敵なお庭が欲しくなるし、なんとなく庭仕事の手順がわかってしまった」とか。

そういう余禄のある絵本ということで、ひとつ。

 ちなみに第一弾の記事は↓こちら。

www.toppinpararin.com

 

さあどんどん紹介していきましょう。

 まずは「船を見にいく」。

船を見にいく

船を見にいく

  • 作者: アントニオ・コック,ルーカ・カインミ,なかのじゅんこ
  • 出版社/メーカー: きじとら出版
  • 発売日: 2016/07/11
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

 船を造るところを見に行くのが好きな「ぼく」。

 

― 船はじっと、とまってるわけじゃない。

ゆっくりと、いきをしながらねむっているんだ。―

 

造船所が大好きな少年、というと、かっこいい船がたくさん出てくる乗り物絵本だと思うじゃないですか。

この本はそういうわけじゃないんです。いや、かっこいい船はもちろん、船の内部構造までしっかりと描かれているんですが、これを乗り物絵本と呼ぶにはあまりにも昏く、あまりにも深いのです。

 

― 船のなかはひんやりしていて、とうめいな人たちがいっぱいいる。

さわろうとしてもさわれない、旅人のゆうれいなんだ。

(中略)

みんな、過去も着替えも、思い出も、もっていない。

けれど、この世じゃないどこかで発行されたチケットをもっていて、ながいながい旅をつづけている。―

 

夜中にしのびこみ、「とうめいな人たち」と同じ空気を吸う少年。

冷たく暗い海、巨大な鉄の塊が息づく。朽ちた船はまた新しい船の材料に使われ、完成した船は旅立ち、いつか息絶えてまた新しい船が作られる。

うずまく海に、呼吸する鉄の塊に魅せられて、誰にも言えない秘密を胸に抱く少年。

船って、旅って、なんでしょうね。

その答えの一つがこの絵本なのではと思います。

読み聞かせの目安は6~7分。

対象年齢は小学校高学年~大人まで。(主婦の独断と偏見による)

 

 

「ラン パン パン」

 

ラン パン パン―インドみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

ラン パン パン―インドみんわ (児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: マギーダフ,アリアンヌドウィ,ホセアルエゴ,山口文生
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1989/06
  • メディア: 単行本
  • 購入: 2人 クリック: 15回
  • この商品を含むブログ (11件) を見る
 

 奇想天外なだけじゃない。見よ!この圧倒的説得力を!

私は寡聞にして知らなかったのですが、こちら1989年発売のロングセラー。

インドの民話を基にした絵本です。

妻を横暴な王にさらわれたクロドリは、怒りに燃えて妻を救い出す旅に出ます。

このクロドリの勇ましいことといったら!

道中出会った、王に恨みを抱く動物や、木の枝や、川(川!)を、

耳の中に入れて(耳の中!)、王様を懲らしめに向かいます。

これを小学校の子どもたちの前で読んでいると、何度も「え~っ!」という声が子供から上がります。「耳の中にネコが入るわけないじゃん!」「アリを耳に入れたらかゆいし~!」当然と言えば当然ですが、小生意気なツッコミも遠慮なく入ります。

しかし怯んではいけない。堂々と読み進めて下さい。

子どもたちは、ちょっとした間違いや、理屈に合わないことが大好きです。

この絵本が出版されてから、いや基になった民話が大人から子供へ語られるたびに、

その場にはきっと子供たちの、何万回、何億回の「え~っ!」という声が上がっていたことでしょう。

いつしか子供たちはこの絵本の奇想天外な物語とカラフルで動きのある構図に引き込まれ、最後にクロドリの耳から川が流れだし大洪水を起こすシーンでは、手に汗握る真剣な顔や、会心の笑みに出会えることと思います。

もうね、入るったら入るの。耳に。耳に川が入るったら入るのよ黙って見てろ。物語の暴力的なまでの説得力は民話ならではでしょうか。

子どもの物語には、彼ら自身のごっこ遊びのように、整合性なんてものは原則として必要ないんです。

あり得なくていい。自由でいい。美しく闊達であれ!

この本を読むたび、そんな風に頭をガツンと殴られるような衝撃を感じます。

読み聞かせの目安は7~8分。

対象年齢は年少さん~小学校中学年くらいまでかな。

 

 

次に「庭にたねをまこう!」

 

庭にたねをまこう!

庭にたねをまこう!

 

 春を迎えた子供たちが、自宅の庭にたねをまき、いろんな植物を育て、

収穫物でパーティを開くまでの輝かしい季節を描いた絵本です。

これね、判型がとてもいいんですよ。細長い絶妙なサイズ感の絵本で、ちょっと目を惹くデザインです。

子どもたちの庭仕事の様子がとても活き活きと驚きに満ちていて、それでいて作業は的を射ている。頼れるアドバイザーとして、ブラッサムおじさんがいるのです。

庭に集まる小鳥やカエル、虫たち…小さな生き物もたくさん描かれます。

雑草取りも、害虫退治も、みんなでやればこわくない!

子どもには、ちょっとした庭仕事のハウツー本にもなります。

自分だけのすてきな庭がほしくなることうけあい。庭仕事がそろそろはじまる、今の季節にぴったりの絵本です。

読み聞かせの目安は、文章の量がかなり多いので15分~20分くらい。

本が小さ目なので、大勢への読み聞かせにはあまり向かないかも。

おうちでゆっくり子どもと眺めていたい感じの本ですね。

対象年齢は年長~小学生くらいまで。

 

 

次に「あたまをなくしたおとこ」

 

あたまをなくしたおとこ

あたまをなくしたおとこ

  • 作者: クレール・H・ビショップ,ロバート・マックロスキー,もりうち すみこ
  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2011/05/05
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 1人 クリック: 33回
  • この商品を含むブログ (6件) を見る
 

 ある朝、男が目覚めてみると、なんと頭がなくなっていた!

奇想天外で、ひたすらシュールなストーリー。

古典名作絵本ですが、邦訳されたのは2011年。

「かもさんおとおり」「サリーのこけももつみ」などのロバート・マックロスキーの絵が、20世紀初頭のアメリカの市場や祭り、見世物などの風景を活き活きと描き出しています。

こういう、歴史の教科書にはあまり載っていない、世界のいろんな風景を垣間見るってとても貴重な体験だと思います。

私の場合はフェリーニの「道」を観た時に、ああサーカスってこんな世界だったのか、旅芸人ってこういう人のことを言うのか、私たちの生活とかけ離れた世界が、数十年前のイタリアにあったのか!と強烈に思ったことを覚えています。

お話自体は本当にもう、奇想天外だしオチはひどい(いい意味で)し。

それかい!散々引っ張ってそれかい!もやもやするわ!という…笑

子どもたちと一緒に、なんてバカらしいんだ!と笑って読んで、しかし近代アメリカの原風景はしっかりと心に残るという、なんかもう一粒で二度おいしい絵本です。

読み聞かせの目安は7~8分。

対象年齢は年長さん~小学生くらい。

 

この記事の最後は「稲と日本人」

 

稲と日本人 (福音館の科学シリーズ)

稲と日本人 (福音館の科学シリーズ)

 

 日本人が古くから主食にしてきた米。

その米を食べ続け、命をつなぐために、日本人と稲はどう対峙してきたか。

稲の品種の変遷、絶え間ない品種改良の歴史から、

たびたび襲う凄惨な飢饉、水不足を補う工夫や水争いについて。

そして現代の米作りの現状と課題から、未来への展望まで。

現代の私たちにとっては主食の選択肢の一つに過ぎなくなっている米が、

歴史上、いかに日本人とともにあり、命綱であったのかを丁寧に、淡々と教えてくれる凄みのある読み物絵本です。

淡々とした語り口ゆえに、むしろ飢饉の恐ろしさが身に沁みます。

享保の大飢饉では、飢餓で行き倒れた男の一人は、身なりも立派で、大金を持っていたこと。

どんな大金持ちでもたった一椀の米を買うこともできなかったという悲しくも虚しい話の部分では、その時読んでいた小学六年生の、少しざわついていた教室がシンと静まり返りました。

食べるとは生きることである、その原点を問い直す、ガツンと重い一作です。

読み聞かせの目安は、テキストが多いので、全部読むと30分近くかかります。

そのため、私が小学校で読むときは主だった部分をかいつまんで紹介するブックトークの形をとります。

いずれ図書館などで、ひとりでも手に取って読んでくれる子が増えてほしいと心から思う絵本です。

対象年齢は小学校高学年~大人まで。

 

 

さて、今回の紹介はこのくらいにしましょう。

続きはぼちぼち書いていきますので、またお目見えできるとうれしいです。

 

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2016年に買ったすごい絵本その①

2016年に買った絵本の中から特に(いろんな意味で)すごいやつを選び出してご紹介しようという今回の記事ですが、今ね、2017年2月半ば。前回更新は昨年12月。

 

(間)

 

はいこの間ですべてをご賢察頂いて!それではさっさと参りましょう。

まずは全体像から。

 

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こうして拡げると一冊一冊、その本に出会った時のことと旅立っていった書籍費のことが鮮やかに思い出されます。これで一部ですよ今年も買ったなぁ。我が絵本人生に一片の悔いなし。

 

さて冊数も多いので、コンパクトにご紹介してまいりたいと思います。

 「まんげつの夜、どかんねこのあしがいっぽん」

まんげつの夜、どかんねこのあしがいっぽん

まんげつの夜、どかんねこのあしがいっぽん

 

 ひとりぼっちのノネコは、食べてばかり。

さみしいと、心のかわりにおなかをみたしてしまう。

とうとう、ノネコは、ともだちをさがしにでかけた。

まんげつの夜は、猫たちの特別な夜。

(カバー裏より)

色鮮やかな版画で描かれた猫たちの姿が実にいきいきとしているこの本。

さみしくて食べてばかりのノネコが、ひょんなことから土管にすっぽりはまってしまいます。

そこへ現れるのは様々な、個性豊かな猫たち。

猫好きの方はもちろんのこと、引っ込み思案・口下手・外見など、コンプレックスを抱える子供や大人の心にやさしく響く絵本です。

読み聞かせ…目安は15分~20分

対象年齢は年長さん~小学校高学年くらいまで。(主婦の独断と偏見による)

 

 

次にご紹介するのは

「アニマリウム ようこそ、動物の博物館へ」

アニマリウム ようこそ、動物の博物館へ

アニマリウム ようこそ、動物の博物館へ

  • 作者: ジェニー・ブルーム,今泉忠明,ケイティー・スコット
  • 出版社/メーカー: 汐文社
  • 発売日: 2016/08/06
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

「今、地球上には、およそ190万種の生き物がいます。

それは私たちが存在に気づき、一つ一つ名前をつけたものです」

という言葉で始まる、日本語版監修の動物学者・今泉忠明氏の言葉。

この本はあらゆる生き物の進化を、分類学によっていくつもの枝に分かれた動物たちを、美麗な精密画と端正かつ的確なテキストで描き出す、圧巻のボリューム(サイズはなんと約38×28×2㎝)の博物絵本なのです!

「アニマリウム」のどこがすごいかというと…絵がすごい!ボリュームがすごい!迫力がすごい!解説がすごい!要するに全部すごい。

精密画について、写真みたい!という(まるで悪意のない)賛辞がよく見られます。

またそれに対して、写真と同じように描くなら写真でいいじゃないか、という揶揄もしばしば見られます。

でも!それは違う!と言いたい。少なくともこの本に描かれた動物たちは、同じポーズの写真よりもはるかに多くのことを私たちに物語ってくれます。絵でなければならない理由があるのです。

動物を精密に描こうと思う時、当然、その動物の骨格から筋肉の付き方、更にそれに派生する食性や習性に至るまでの知識が必要となります。

それらの膨大な知識を線と点と色に落とし込む時、自ずとその筆致には、その生き物特有の部位、驚嘆すべき生命の仕組みが自然と強調されるようになるのです。

写真だと、光の加減やちょっとしたポーズの違いで隠されてしまう細やかな命の仕組みが、絵にすることによって鮮やかに描き出されるのです。

これを買った当初、ツイッターでこの本がすごいんですよ!と興奮気味に紹介しましたら、自然科学に興味のあるフォロワーの皆様の目に留まり、私も買いました!すごかった!と大いに盛り上がり、ちょっとした話題になったのが大変うれしかったです。

 

あっさり紹介すると言ってたのについ鼻息荒く語ってしまった。

それくらい凄い本だということで、どうかひとつ。

読み聞かせ…多人数への読み聞かせにはあまり向きません(テキストもページ数も膨大のため)が、ブックトークや、こういう本があるよ!図書館で見つけたら見てみてね!という紹介などは是非してあげてほしいと思います。

対象年齢は、生き物に興味のある人間なら何歳でも。

 

「おおきなかしの木」

 

おおきなかしの木 (大型絵本)

おおきなかしの木 (大型絵本)

  • 作者: エリザベスローズ,ジェラルドローズ,Elizabeth Rose,Gerald Rose,ふしみみさを
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: 大型本
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 むかしむかし、どこかの森の中で、リスがうっかり口から落としたドングリが芽を出しました。

芽はどんどん大きくなり、立派なかしの木になります。

やがて時代は流れ、周りの木々はどんどん切り倒され、かしの木の周りには村ができて…

1本のかしの木の静かで、そして劇的な一生を、秀逸な構図と活き活きとした描写、そして抑えたトーンのテキストで描き出す傑作です。

このかしの木は、喋りません。動物たちも喋りません。絵に寄り添うテキストもまた、木や動物たちに感情移入をすることはありません。

ただ、そこにあるだけの美しさと命のはかなさ、力強さ。

こういう絵本が、忘れられずに読み継がれていってほしい、と願わずにはいられません。

読み聞かせ目安は6~7分。

対象年齢は年中さんくらいから~ですが、結末は小さな子には少し悲しすぎるとも思えるお話です。個人的にはぜひ小学校中学年~高学年くらいの子に読んでほしいと思います。

 

 

 

「のはらでまたね」

 

のはらでまたね

のはらでまたね

 

 ハイパー癒しタイムうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!

 

これはね、2016年に買った中で迷いなく、最も和む絵本です。なごみナンバーワン。

春のね、春の絵本なんですよ。作中の季節は冬なんだけどこれは春の絵本です。

たぬきが、友達のこぐまに黄緑色のマフラーをもらいます。

マフラーを知らないたぬきに、ことりがいいます。

「これ、のはらよ。みどりの のはら。

うんと さむいときのために、こぐまが はるのかけらを くれたのよ!」

真冬の森の中に突然現れた、温かいのはら。

そこに動物たちが集まってきて…というお話。

絵もテキストもふんわりと柔らかくて、読んでるこちらの口もつい、ほころぶような。

冬から春にかけて、まさに今の季節におすすめの絵本です。

読み聞かせの目安…4~5分

対象年齢…2歳~小学校低学年くらいまで。

 

 

というわけで2016年に買ったすごい絵本その①でした。

結局いろいろ書いてしまった!果たして2月中に全て紹介し終わるのか!?

他の記事もはさみつつ、ゆっくり書いていきたいと思いますので、よろしければのんびりお付き合いくださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンプレックスの絵本。

コンプレックスの絵本、なんて銘打っておきながら、私はまだ迷っております。

コンプレックスって何でしょうね。心理学用語としては「何らかの感情によって統合されている心的内容の集まりである。」とあるのですが、誤用が世間一般に広まった結果として、コンプレックス=劣等感のこと、と捉えられているようです。

自分が劣等感を初めて抱いたのっていつの事か、覚えてますか?

私は覚えてないです。たぶんずっと小さなころから、劣等感はいつも傍にあったような気がします。両親や親せきや、田舎特有の狭いコミュニティの中で、特に容姿については、けなされた事こそあれ、褒められた覚えがほとんどないのです。

一度もないなんて事は常識で考えてもあり得ないと思うのですが、とにかく子どもは10の褒め言葉よりも、たった1つの鋭い自分への否定を強く覚えているものなのかもしれません。

「太っていてみっともない」「爪を噛んでいて汚い」「服のセンスが悪い、肌や髪の手入れが悪い」「目つきが悪い(目が悪かったので)」「お母さんに似ていない(母は美人と呼んでいい部類です)」

そんな風に評された容姿や、女性としてのありようへのコンプレックスは子どもの頃から私の心に深く根を下ろし、常に付きまとい、一緒に成長してきたのです。

コンプレックスは、私をしょんぼりさせるばかりではありませんでした。

むしろ表面上は、私はそんな風に言われれば言われるほど、「容姿で判断するような人に好かれなくてもいい」「太っていても誰にも迷惑かけていない」「肌や髪のお手入れにかまけてたら頭空っぽになる、勉強したほうがいい」とどんどん語気を強め、頑なになっていきました。迫りくる自己肯定感への攻撃に、せっせと防壁を立てていたのです。

内心ではずっと、きれいになりたかったのに。でも、わくわくする気持ちでマニキュアを買ってくれば「そんな短い爪に塗ってもみっともない」、化粧水を買ってくれば「それより痩せた方がいい」、頑張ってダイエットすれば「まだまだ太い」、そんな言葉に、わずかに芽生えた勇気を挫かれ続けてきました。

自分で一度コンプレックスに対する防壁を作ってしまうと、その価値観にすがるようにもなっていきます。自己肯定感の根っこが発達していないので、些細な批判にもすぐに心が折れてしまうのです。

 

前置きがずいぶん長く、個人的になってしまいました。

これからご紹介する絵本の主人公たちは、みんなそれぞれ形の違うコンプレックスを抱えているのではないかと思います。

 

せかいいちのねこ (MOEのえほん)

せかいいちのねこ (MOEのえほん)

 

 「せかいいちのねこ」

イラストレーターとしても人気のヒグチユウコさんの絵本。

ぬいぐるみのニャンコは、持ち主の男の子が大きくなって、ぬいぐるみに飽きてしまうのではないかと恐れています。

猫のヒゲを集めて綿の身体に入れ込めば、本当の猫になれるという話を聞きつけ、家を出てヒゲ集めの旅に出ます。本当の猫になれば、男の子もずっとかわいがってくれると思って…

旅の途中で出会う様々な猫たち。その表情もしぐさもさまざまですが、どれもとっても猫らしい。

 

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服を着て、すっくと立って(全然猫背じゃない!)、犬まで連れているのにこの猫らしさ。

ニャンコが、様々なほんものの猫たちとの出会いを経て、自分の居場所を再確認するまでの切なく、心温まるお話です。読んであげるなら年中さんくらいから。長めのお話です。

 

 

きょうは、おおかみ

きょうは、おおかみ

  • 作者: キョウ・マクレア,イザベル・アーセノー,小島明子
  • 出版社/メーカー: きじとら出版
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

 「きょうは、おおかみ」

妹のバージニアは、目が覚めると、おおかみみたいにむしゃくしゃしてた―

 

とにかく何でも気に食わない。楽しそうにしてる友達も。お姉さんのバネッサの素敵なワンピースも。ご機嫌を取ろうといろいろ働きかけてくれるバネッサの優しさも、何もかも!!!

そんなどうしようもない「おおかみ気分」、覚えがある人も多いのではないでしょうか。

むしゃくしゃして当り散らして、我儘だって叱られてまた反発して、そのおおかみの牙に一番傷つけられているのは、他でもない自分自身だったりするのですよね。

この絵本、お姉さんのバネッサのまるで聖母のような暖かな接し方で、バージニアの心がほどけていく、というお話です。

とても素敵な姉妹愛のお話なんだけど、ひねくれた大人としては、あんまりにも優しいお姉さんの存在が、バージニアのおおかみ気分、コンプレックスの原因の一つでもあるんじゃないか―姉さんみたいになれない自分、という―なんて穿った見方をしてしまいます。

それもまた、これからの二人の成長によって変わっていくものだと思える明るいラストですけれどもね。

小学校低学年くらいから、あえての高学年まで。おすすめです。

 

へんてこりんなサムとねこ (1981年) (アメリカ創作絵本シリーズ)

へんてこりんなサムとねこ (1981年) (アメリカ創作絵本シリーズ)

 

 「へんてこりんなサムとねこ」

絶版本で、古本にはプレミア価格が付いてるのですが、ぜひ紹介したかったので。

サムは港町に住む女の子。「へんてこりん」=空想、でまかせ、嘘 ばかり言っています。

赤ちゃんカンガルーを飼っていること。玄関のマットは竜の引っ張る戦車。お母さんは人魚であること。(サムのお母さんが亡くなっていることはみんな知っています)

空想で必死に自分の小さな心を守っているサムの友達は、年寄りねこのバングスと、サムの言うことは何でも信じる、小さな男の子トーマス。

ある日、トーマスはサムの言うとおり、赤ちゃんカンガルーを探して、危険な岩礁へ向かってしまいます―

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抑えたトーンの挿絵が、サムの今にも崩れそうな世界を描き出しています。

最後はちゃんとハッピーエンド。サムは、自分の空想―「へんてこりん」とどう決着をつけるのでしょうか?

図書館にも蔵書があるところが多いので、ぜひ手に取ってみて下さい。

小学校くらいから。

 

 

かいじゅうたちのいるところ

かいじゅうたちのいるところ

  • 作者: モーリス・センダック,じんぐうてるお,Maurice Sendak
  • 出版社/メーカー: 冨山房
  • 発売日: 1975/12/05
  • メディア: ハードカバー
  • 購入: 19人 クリック: 836回
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 「かいじゅうたちのいるところ」。

モーリス・センダック作品の中では、日本で一番有名な絵本ではないでしょうか。

初めて読んだときは、いたずら好きの男の子マックスが好き放題に暴れ、平気な顔で家出をし、かいじゅうたちを従えて、あっさり家に帰ってくる-そんな愉快痛快な絵本だと思っていました。

でも自分が子供を持ってから改めて読み返すと、男の子がお母さんから「このかいじゅう!」と叱られ、「おまえをたべちゃうぞ!」と威勢よく言い返す時、その心はどんなに荒く波立っていることか、どんなに切なく虚勢を張っていることかと、しみじみとマックス(主人公)が愛しく感じました。

そう思うと、旅立った後のかいじゅうたちとのやり取りも、どうしてあんなにマックスが最強なのか、かいじゅうたちの王様なのか、わかるような気がします。

自分を認めて、自分の思うままになる世界が、マックスには必要だったんですね。

そこで自分の中の荒ぶるものを思う存分発散して、そしてやっと素直に、帰りたいと思えるようになる。

素直にごめんねが言えないのは、悪い子だからじゃなく、自分だってもしかして、自分がかいじゅうなんじゃないかと思ってしまうから。自信がないからなんじゃないかなぁ、と思ってしまう男子の母なのでした。

2~3歳ころから楽しめます。ただしかいじゅうはかなり怖いビジュアルです笑。

 

と、勝手にコンプレックス絵本と括った4冊をご紹介しました。

この絵本の主人公たちはみんなそれぞれ、絵本のストーリーを通じて自分の居場所を見つけたり、再確認したりしていきます。

振り返って自分はどうかなと。コンプレックスを抱えたまま大人になってしまった自分には、優しく導いてくれる猫たちも、年寄りねこのバングスも、優しいお姉さんもかいじゅうたちも居ないけど、それでも抱えてきた心のしこりのおかげで、この絵本たちをしみじみ愛しく思う部分もあるのだと思うと、悪いことばかりじゃないと思います。

最近やっと、自分で自分をかわいがってやりたい、自分だってきれいになりたいと思っていいんだ、と変わってきました。

およそ30年ほどかかりましたが、芽生えかけた自己肯定感を大事に、時にはいろんな愛すべき絵本たちの力を借りて、育てていきたいと思っております。

 

あと体に悪いので普通に痩せようとは思いますデブ(語尾)!!!!!

 

 

 

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うたう、となえる、はずむ絵本。きくちちき「ぱーおーぽのうた」を子どもたちに読んだら。

先日の、ちょっと、いやすごく嬉しかったことを忘れないうちに書き留めておきたいので、もう眠いけども大急ぎで更新。

リズム感のある絵本って読んでて楽しいですよね。

先日、小学校の低学年の子に絵本を読みに行ったのですが、その時に読んだこの本が大ヒットでして。とにかく手応えがすごくですね。

「ぱーおーぽのうた」

 

ぱーおーぽのうた

ぱーおーぽのうた

 

 「のっちのっちうたお ぱーおーぽ」

象の親子が歌いながら行進。そこにいろんな草食動物たちが合流していく。

草食動物といっても、この本の動物たちは強いんです。

かば、サイ、ガゼル、きりんにサル、かめ。肉食動物をその堂々たる体躯で追い払い、平和でたのしくて激しいパレードが続いていく。

それでこの本、言葉のリズムが抜群にいいんですよ。

読んでいくうちに、大勢の子供たちが、自然と一緒に声を出すんです。

「ぷーおーぽーおーぱーおーぽ!!!」

何十人の子供たちの元気で夢中な声が重なったとき、私は不覚にもちょっと泣きそうになりました。

本は楽しいねえ。楽しんでくれてありがとうね。

 

 この本は私の大好きな絵本作家さんである、きくちちきさんの最新刊です。

そんなわけで、ちょっとファンのひいき目もあることは自覚してるんですが、それでも、初めて目を通した時から、これは絶対に子どもが夢中になって喜ぶ本だぞ!10年も20年も売れ続けるべき本だぞ!という確信がありました。

ちきさんの絵はおおらかで、ユーモラスで、それでいて力強くて、何よりも生命への信頼に満ちているところが素晴らしい。

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小さい動物たちのかわいらしさが果てしなくツボにはまっています。なんてかわいいんだ。

 

同じきくちちきさんの絵本で、読み聞かせのスタメン入りしているのはこちら。

 

ちきばんにゃー

ちきばんにゃー

 

 こちらも言葉のリズムが抜群です。そういえばこれも行進の絵本だ。演奏記号でいうとアンダンテ。口に出すとほんとに気持ちいいんですよねぇ。人を喰ったような小気味よいラストもすてき。

大勢に読むなら、年小~低学年くらいまで向けかな?うちの7歳娘が大好きで、よく寝る前の絵本にリクエストされます。印刷がね、またどれも素晴らしくて。語りだすと涎が垂れてきそうになるので控えますけれどもね。

2冊とも、ぜひとも書店で直接手に取って、めくってみて欲しい完成度の高い本たちです。手触りとか!色合いとか!なんなら匂いとか!激しくおすすめですよ。

 

 

 

 

 

でっかい食べ物っていいよね。

でっかい食べ物っていいですよね。

誰でも一度はホールケーキ丸ごととか、バケツプリンとか、ダチョウの卵の目玉焼きとか夢見たことあると思うんですよね。ないですか。あるだろう。あるはずだ。

絵本にも、でっかい食べ物が出てくる作品が結構ありますよね。

標準よりかなり大き目かな?というのから、規格外にでっかいやつまで。

というわけで今日は我が家にある、でっかい食べ物絵本です。せっかくなので主観によるでっかさランキングに沿ってお届けします。

 

第六位「もっともっとおおきなおなべ」

もっともっとおおきなおなべ (わくわくメルヘンシリーズ)

もっともっとおおきなおなべ (わくわくメルヘンシリーズ)

 

 ねずみが作るきのこシチュー。味見をしてるうちにどんどん量が増えてきて…

いろんな動物たちが食材をプラスしていき、どんどん大きなおなべが必要になっていく!

お話の楽しさはもちろんのこと、どいかやさんの、どこか懐かしい動物たちの絵がめちゃくちゃかわいらしい一冊です。

栗やミルクの入ったシチュー、これがまた美味しそうでねぇ。

 

第五位「りんごがドスーン」

りんごがドスーン (ジョイフルえほん傑作集 16)

りんごがドスーン (ジョイフルえほん傑作集 16)

 

 これはうちの娘が2歳ころに一番のお気に入りだった絵本です。あまりにも何度も読むようにせがむので、私が止めなければ連続何回読めと要求するのか試してみたことがあるんですよ。そしたらなんと、13回。

いくら短いお話だからって、さすがに口の中カラッカラになりました。

声に出して読むとリズムが快いんですよねえ。起承転結のシンプルさ、ラストの安堵感も素晴らしい。

1~3歳くらいの幼いお子さんに絵本をプレゼントするとき、真っ先に思い浮かぶ絵本です。

 

 

第四位「ぐりとぐら」

ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)

ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)

 

 はいみなさま声をそろえてご一緒に!

「ド定番!!」

定番中の定番。名作中の名作。

ぐりとぐらのカステラのあの、ふんわり膨らんで、それでいてなんとなく儚げな姿を夢にまで見たお子さんorもとお子さんが、日本中に何人いることか。

食べ物の大きさ的には、前掲の「りんごがドスーン」といい勝負かなと思ったんですが、名作に敬意を表して上位に推させて頂きました。

読むたびに、ラストの卵の殻carの動力が気になりますが、こまけえこたあいいんだよ。

 

 

第三位「ポテトむらのコロッケまつり」

ポテトむらのコロッケまつり

ポテトむらのコロッケまつり

 

 これは今年出た絵本。絵は私が大好きな出口かずみさんです。

じゃがいもを丹精込めて育てたおばさんが、たくさんできたじゃがいもで、何かみんなに喜んでもらえるものはできないか?と考えた末、大きな、大きなコロッケを作ることになりました。

個人的にこういうお話で大切なのは、作成のプロセスの描写だと思うんですよ。

突飛な大きさのものだからこそ、畑で育てるところから、準備の段階をしっかり描く。そこに出口さん一流の飄々としたユーモアが散りばめられていて、とても楽しくて味わい深いのです。

突拍子もない大きさのコロッケが、ページをめくるたび、できそうかも…できそうだな?という気になっていく。最後のページのざっくりほっくり美味しそうなこと!

鼻先に、ソースの香りが漂ってきそうな絵本です。

 

 

 

第二位「ジャイアント・ジャム・サンド」

ジャイアント・ジャム・サンド (えほんライブラリー)

ジャイアント・ジャム・サンド (えほんライブラリー)

 

「ジャイアント・ジャム・サンド」のタイトル通り、超巨大なジャムサンドを作るお話なんですけどもね。

 この食べ物絵本が、他とは一線を画しているところは、

「人間が食べるために作るわけではない」

というところ。

ある日突然、村にやってきた400まんびきのハチの大群。

困り果てた村人たちが考え付いたのは「巨大なジャムサンドを作ってハチをおびき寄せよう」という突っ込みどころしかないこと。

そしてその過程も明らかに規格外。食パンを焼く型は、廃工場。もう一度言います、パンを焼く型は、廃工場です。

トラックでジャムを運び、スコップで巨大なスライスパンに塗る。おびき寄せたハチをどうするか…

それは読んでのお楽しみです。(食べ物は粗末にしてないので安心してお子さんに読んでくださいね)

この本、翻訳の妙なのか、ものすごく声に出して読みやすいんですよ。基本は七五調で、リズミカルにぽんぽんぽん、と読めてしまう。

小学校の読み聞かせで困ったときはとりあえずこれ、という、個人的にとても頼りにしている本であります。

 

 

そして栄えある(?)第一位、「よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし」

よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし (レインボーえほん)

よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし (レインボーえほん)

 

 でっかい食べ物、というか、大量の牛乳、の絵本なのです。とにかくスケール感は段違いです。

よしおくんがうっかり倒してしまった牛乳びんから、牛乳がどんどんこぼれてしまって…とまらなくて…

世界が牛乳に水没するお話です。牛乳だから水没じゃないか。牛乳没。

シュールな展開ながらもきっちりとした起承転結、そして最後はハッピーエンド。

読めば牛乳が飲みたくなるような、ちょっと牛乳が怖くなるような…

100%ORANGEとして活動されている、及川賢治、竹内繭子ご夫妻の、デザイン面でもさすが!と唸らされる絵本です。

 

 

番外編

オッベルと象 (画本宮沢賢治)

オッベルと象 (画本宮沢賢治)

 

 はい番外編です特別賞です、「オッベルと象」。

これはまったく食べ物絵本じゃないんですけども、小学校の国語の教科書でこれを初めて読んだときから、私の頭の中には

「そいつで上手に腹をへらし、ひるめしどきには、六寸ぐらいのビフテキだの、雑巾ほどあるオムレツの、ほくほくしたのをたべるのだ」

という一文が強烈に焼き付いてしまったのですよ。

これのおかげで、たまにステーキを焼くときにはフライパンからはみ出るくらいの肉じゃないと物足りないし、オムレツを焼くときには6人家族で卵10個をいちどにエイヤっと焼いてしまうのですね。のんのんのんのんふるうのだ。そしてほくほくしたのをたべるのだ。

 

というわけで、でっかい食べ物絵本でした。

今は、どんぶりに作った茶わん蒸しが食べたいです。おなかすいた。

 

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クリスマスの絵本③ 大人にもメリークリスマス。

こんばんは。

クリスマスの絵本記事第三弾、大人にこそおすすめのクリスマス絵本4冊ですよー。

どれも間違いのないすてきな絵本たちですよーさー皆さん寄っといでー。

 

トスカのクリスマス (講談社の翻訳絵本)

トスカのクリスマス (講談社の翻訳絵本)

  • 作者: マシュー=スタージス,アン=モーティマー,Matthew Sturgis,Anne Mortimer,木原悦子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/10/28
  • メディア: 単行本
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 猫ってさ、可愛いくて美しいじゃないですか。

クリスマスも可愛いくて美しいじゃないですか。いろいろ。飾りとか。

猫のクリスマス。可愛いわ美しいわの二乗じゃないですか。

そんなわけで猫×クリスマス絵本「トスカのクリスマス」です。

[あらすじ]

クリスマスの準備で忙しい家族は、いつものように猫のトスカをかまってくれません。

すねてしまったトスカの元に、サンタクロースがやってきて…

 

猫の可愛さを描いた絵本は数えきれないほどあるんですけれども、

この絵本はなんといっても猫の猫らしさが素晴らしいです。

写実的な細密画なんだけれども、どんな写真よりも、猫の表情が猫らしい。

トスカの表情の表現を、人間側に寄せようとしていないんですよ。

媚びもなく、デフォルメもなく、完璧な猫。そしてかわいい。美しい。

イギリスの家庭(おそらくは、です。著者が二人ともイギリス人なので)のクリスマス風景の描写も実に美麗で、見応えのある絵本です。

 

 

クリスマスにやってくるのは?

クリスマスにやってくるのは?

  • 作者: ケイトバンクス,ゲオルグハレンスレーベン,Kate Banks,Georg Hallensleben,いまえよしとも
  • 出版社/メーカー: BL出版
  • 発売日: 2010/11
  • メディア: 大型本
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 クリスマスって、特にキリスト教徒ではない日本人にとっては、めでたくて、なんとなく浮かれてて、とにかく美味しいもの食べて、子供たちは欲しいものもらって、カップルたちはウフフアハハする日じゃないですか。

それはそれでとても楽しいし、私は日本のクリスマス大好きなんですけれども、宗教的バックボーンのある方々の迎える、もっと厳粛なクリスマスにもとても興味があります。

この絵本、「クリスマスにやってくるのは?」

ー「ゆきが ふりつもるなか、なにかが そこまで きている。

クリスマスのうたごえが 町にひびくなか、

なにかが そこまで きている。 それは…」(カバー袖より)

クリスマスの支度が進む家々。そして寒空の下、人間には見向きもされない動物たち。

そのどちらにも、「なにか」がしずかに、気づかないうちにやってくるのです。クリスマスの夜に…

私はクリスチャンではないので知ったような口はきけないのですが、この絵本を読むと、キリスト教でいうところの「祝福」の意味が、少し実感できるような気がします。

暖かな家で過ごす人間たちにも、森や野原、馬小屋の中で過ごす動物たちにも、等しく注がれる恵みのようなものの存在。それを詩的な文章と、油絵の柔らかな絵具の厚みが描き出している絵本だと思います。

この本の画家はゲオルグ・ハレンスレーベン。非常にかっこいいお名前で一度聞いたら忘れられないのですが、あの「リサとガスパール」や「ペネロペ」シリーズの作者ですね。ゲオルグ・ハレンスレーベン。余談ですが、目にする度に、必殺技か合体ロボの名前みたいだな、と思ってしまってごめんなさい。いけッッ!ゲオルグ・ハレンスレーベンッッっ!!!(やめなさい

 

 

ババールとサンタクロース (評論社の児童図書館・絵本の部屋―ぞうのババール 5)

ババールとサンタクロース (評論社の児童図書館・絵本の部屋―ぞうのババール 5)

 

 大人になると、特に小さいお子さんのいるご両親なんかは、

クリスマスというと自分が楽しむというよりも、いかに子供たちを楽しませるかに頭を悩ませるようになるんではないかと。

こちらの絵本。名作古典絵本なので説明するのも野暮なのですが、ぞうのババールシリーズは、かいつまんで言うと、ぞうのババールが半端なくとんとん拍子に人生を歩んでいく様子を描いた絵本です。

とにかく、とんとん拍子っぷりが半端ない。第一作目で親を亡くした孤児から国王まで登りつめるくらいの象ですよババールは。

この本でも例にもれず、実に立派な国王っぷりをいかんなく発揮しています。

ゾウの国にはそれまでサンタクロースが来なかったらしいのですが、子供たちがどこからかサンタクロースの噂を聞きつけ楽しみにしているのです。

それを見たババールはどうするかというと、サンタを呼びに行くのですよ。王様自ら。

「じかにたのめば いやとはいうまい」とか言って。さすが王になるゾウは違う。

紆余曲折あってようやくサンタの住処へたどり着いたババール。

しかしサンタは、毎年クリスマスにはハードな労働でくたくたになり、とてもゾウの国まではまわりきれないというのです。

さあここからどうするか、ババールの王の器の見せどころです。

サンタを呼びに行くところからクリスマスをセッティングしようとするババールの気概に、(私も今年もサンタ代行業務、頑張ろう…)と、たいへん励まされる二児の母なのでした。

あとね、絵がね、かわいい。そして無邪気。なのにふしぎに気高いのですよ。

登場する動物たちの、ただの点々の目が、どうしてこんなに暖かで心安らぐのでしょう。

シンプルな線が、どうしてこんなに活き活きとして見えるんでしょう。

古典ってすごいなあ、と改めて思うシリーズです。やはり80年以上、世界中で愛されているゾウは一味違うぜ。

 

 

クリスマス・イブ

クリスマス・イブ

  • 作者: マーガレット・ワイズブラウン,ベニモントレソール,Margaret Wise Brown,Beni Montresor,矢川澄子
  • 出版社/メーカー: ほるぷ出版
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 大型本
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 クリスマス・イブの深夜、目を覚ました子どもたち。

こっそりベッドを抜け出し、真っ暗な廊下を抜けて、暖炉とツリーのある居間へ…。

一夜の、ほんのひと時の大冒険。過不足なさ過ぎてこわいくらいのマーガレット・ワイズ・ブラウンの文章。矢川澄子(澁澤龍彦の元奥さんですね)の端正な訳と、舞台美術家ベニモントレソールの、美しすぎてこわいくらいの筆致、大胆な構図。

それぞれがしっかりと結び合って描き出す名作です。

この本はとにかく、凄みがあるんですよ。ページの構成も大胆にして独特。黒、オレンジ、黄色の3色だけで描き出す圧倒の世界。めくるたびにため息をついてしまいます。

冒頭のこの1ページだけでも、線だけで、音もなく降り積もる雪のみっしりとした密度まで感じさせる、恐ろしい画家だなぁと震えました。

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この作品はマーガレット・ワイズ・ブラウンの遺作にベニ・モントレソールが絵をつけたものなのですが、この素晴らしい絵と構成を見ずに亡くなってしまったことが、他人事ながら本当に残念だと思いました。

大人は美しさに打たれ、子供はどきどきわくわくする、素晴らしいクリスマス絵本です。

 

さて、三つの記事に分けたクリスマス絵本の紹介も、ひとまずこれで終わりとなります。

お子さんたちも大人たちも、ひとりの人もおおぜいで暮らす人も、

みんな温かくて穏やかなクリスマスを迎えられますように!

あとサンタさんが私に5億円くれますように!

(最後に台無しにしていくスタイル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマスの絵本② 半信半疑なお年頃のこどもたちに。

こんばんは。深夜ですね。掃除をしてたら、始める前より部屋が散らかっています。おかしい。主婦歴を考えても、そろそろ中堅ポジションだというのにこの事態おかしい。

それはさておき、クリスマス絵本の記事2つめです。

一つ目のクリスマス絵本記事は、まだまだサンタさんを信じきっているお年頃のお子さんたちにおすすめの絵本でした。

今日は、それより少し成長し、回りの友達がサンタさんなんて居ないって言ってるんだけど…とか、薄々気づいているけどプレゼントもらえるから騙されてあげるよ、なんて子とか、夜中に目を覚ますとママがサンタにキスしてたんだけど…みたいな、おおむね小学生くらいまでのお子さんにおすすめのクリスマス絵本です。

 

マーガレットとクリスマスのおくりもの

マーガレットとクリスマスのおくりもの

 

 サンタクロースにあこがれる女の子、マーガレット。

木の実やきれいな葉っぱを集めては、周りの大人たちにプレゼント。

でも大人たちは忙しくて、あまりかまってはくれません。

そんなクリスマス・イブの朝、「サンタクロースの手伝いをするようにと、マーガレットを迎えに来たのは、くるみ割り人形のルディで…

人を喜ばせたいというマーガレットの気持ちが、どんなに素敵な結末を迎えるか。

またこの絵がね、素晴らしいのです。素晴らしく美しくて、気品があって、それでいて可愛いしお洒落なのです。

トナカイの代わりにマーガレットとプレゼントを運んでくれる8羽の鳥たちが、画面いっぱいに羽ばたくさまは、マーガレットと一緒に、読者である私たちの心も一緒に解き放たれていくような気がします。

 

 

よるくまクリスマスのまえのよる

よるくまクリスマスのまえのよる

 

 名作「よるくま」の続編です。よるくまを知っているに越したことはないですが、これだけ読んでもぜんぜん大丈夫。

自分はわるい子だから、サンタさんは来ないかも…そう心配する「ぼく」の家に、よるくまがやってきます。

よるくまはサンタさんを知らないみたい。

こんないい子のよるくまに、サンタさんが来ないなんておかしいよ…

サンタを待つ男の子の揺れ動く不安な気持ちを、酒井駒子さんの繊細で、あたたかくも昏くもある独特の世界が描き出します。

最後はほっとしてハッピーエンド。というよりこのシリーズはグッドナイト・エンドとでも言いましょうか。

あったかいベッドの中にもぐりこむような安心感のあるラストですよ。

 

 

ビロードのうさぎ

ビロードのうさぎ

 

 酒井駒子さん繋がりでもう一冊。

これをクリスマス絵本と言っていいのか微妙なところではありますが、

とにかくこのビロードのうさぎが、ぼうやのところにやってきたのはクリスマスプレゼントとしてでした。

最初はたくさんあるおもちゃのうちの一つに過ぎなかったビロードのぬいぐるみのうさぎ。

それが段々と、ぼうやには無二のともだちになっていって…

子どもに、心から愛されたおもちゃは「ほんもの」になる。

ビロードのうさぎが「ほんもの」になるまでの、愛しくて切なく、哀しくて美しいお話です。

子どもも大人も、この絵本を読めばきっと、自分が片時も離すことのなかったおもちゃのことを鮮やかに、せつなく思い出すのではないでしょうか。

 

 

くんちゃんとふゆのパーティー

くんちゃんとふゆのパーティー

 

 と、しんみりしたところで極め付けに、私の愛する「くんちゃん」です。

くんちゃんシリーズは何冊も出ているのですが、この「くんちゃんとふゆのパーティー」は、そこら辺のとはひと味もふた味も違うクリスマス絵本です。

何たって、クリスマスじゃないんです。

クリスマスとか一言も出てこないんです。

だってほら、タイトルだって「ふゆのパーティー」。

このお話の素晴らしいところは、クリスマスなんて一切知らない(たぶん)くんちゃん家族が、厳しい冬を生き抜く森の生き物たちや愛する家族のために色々なことをしてあげる、

その結果としてすごくクリスマス的なパーティーが開かれてしまう、という…何を言ってるのかわからないかもしれませんが大丈夫、読めばわかる。

もうね、声を大にして言いたい。

子どもたち、チキン食ってケーキ食って予定調和なプレゼントもらって、そんな通り一遍のクリスマスでいいのかと。

大人たち、チキン食ってケーキ食ってあわよくば彼氏彼女とウフフアハハな事態になっちゃったりなんかしてそういえば今年のクリスマスイブは土曜日だななんだよもうカップルの祭典かよでもまあみんな盛り上がってくっついてプレゼントはわ・た・しとか言ってなんなら最終的に少子化に歯止めをかけて下さればいいんじゃないのかなもうみんな幸せになれ!それはそれとして本当にそんな即物的なクリスマスでいいのかと。

 

くんちゃん達をごらんなさいよ。お互いを思いやっているだけなのに、何故かプレゼント(食べ物)が配られ、ツリーが飾られ、ジンジャーブレッドが焼け、お父さんは白い袋に良いもの詰めて帰ってくるんですよ!結果として!結果としてクリスマス!!!!これ以上の祝祭がどこにあろうというのか!!!!!!!

 

ごめんなさいちょっと興奮しました。

この記事、最初のうちは割といい雰囲気だったじゃないですか。

この落ち着いた素敵ムードで最後までいけるかと思ったけどね、無理だった。

くんちゃんが素晴らしすぎて。

くんちゃんシリーズは好きすぎてこのブログでも今後何度も登場すると思うんですが、

たぶんそのたびにこんなテンションになると思うので皆さんは予め広い心で許して下さい。

 

そんなこんなでクリスマスの絵本・半信半疑なお年頃のこどもたちへ。でした。

 

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